お爺さん司祭様を見えなくなるとね、すぐにキャリーナ姉ちゃんが僕に聞いてきたんだ。
「ねぇ、ルディーン。なにもらって来たの?」
「うんとね、わかんない!」
「え〜、なんで解んないの? これ、ルディーンのお土産でしょ?」
「だってさ、僕と司祭様が帰る時に、ロルフさんがお土産だよってくれたやつだもん」
この荷馬車に載ってる荷物はさ、ロルフさんがフロートボードの魔石を作ってくれたお礼だよって帰る時にくれたでしょ?
だから僕も、この中に何があるのかなんて知らないんだ。
「そっか。じゃあルディーン、いっしょに見ようよ」
「うん、いいよ!」
と言う訳で、僕とキャリーナ姉ちゃんはロルフさんが何をくれたのかを見ようと思ったんだよ。
でもね、そこでお母さんからストップがかかったんだ。
「ちょっと待って、二人とも」
「え〜、なんで?」
「僕が貰って来たのに、見ちゃダメなの?」
「ダメっていう訳じゃないけど、多分食べ物とかも入っているだろうから、蓋を開ける前に手を洗わないと」
そう言えばキャリーナ姉ちゃんはさっきまでお外でなんかやってたし、僕もずっと馬車に乗ってたからおててを洗ってないもん。
お母さんの言う通り、先におててを洗ってから開けた方がいいよね。
「それに私やレーアも何をもらって来たのか気になるから、みんなで手を洗ってから中を調べましょう」
「「は〜い」」
おててを洗ってきれいになったところで、今度こそ何が入ってるのかを見て回る事に。
「あ〜、お母さんの言う通り、食べる物がいっぱい入ってるよ」
「そうね。それも私たちがイーノックカウに行った時に、いつも買って帰ってくるものを中心にそろえられてるみたいね」
まだ近くにある箱とかを開けてみただけなんだけど、それを見たお母さんはお土産の中身がいつもグランリルの人たちがイーノックカウで買ってくものばっかりだって気が付いたんだ。
「そうなの?」
「ええ。イーノックカウに魔物の素材を売りに行く時はいつも、帰りにこの村では手に入らないものを買って帰ってくるでしょ? 多分それを調べてお土産の中に入れてくれたんじゃないかしら」
そう言えば僕も初めてお父さんと一緒に行った時は、お店でいろんなものを買って帰ってきたもんね。
グランリルの人たちはいっつもおんなじお店で買ってきてるって言ってたから、ロルフさんはそこで聞いてこのお土産を買ってくれたのかも。
「あっ! って事はさ、あの樽って」
「多分お酒でしょうね」
お父さん、お店でいっぱいいろんなお酒を飲んで、その中からおいしいって思ったお酒を買ってたでしょ?
お母さんはね、あのいっぱい積んであるちっちゃな樽の中身は、あの時買って来たお酒が入ってるんじゃないかなぁって言うんだ。
「でもちょっと多すぎね。流石にこれを全部うちに置いておくと、ハンスが飲みすぎないかしら?」
お酒は村で作ってないから、いつもは次に買ってくるまでの間に分けて飲んでるでしょ?
だからお父さんは、ほんとはいっぱい飲みたいのにガマンしてるんだって。
「僕、お酒を作れるようになったけど、お母さん、作っちゃダメって言ってるもんね」
「それはそうよ。いくらでも飲めるとなったら体を壊しかねないもの」
お母さんはね、目の前にいっぱいあるお酒の入った樽を見て、ちょっと心配ねって言うんだよ。
そしたらさ、
「ん、何だ。何が心配なんだ?」
急に後ろから声を掛けられたもんだから、僕たちはすっごくびっくりしたんだ。
でね、みんなで振り返ったら、そこには荷馬車の中を覗き込んでるお父さんとお兄ちゃんたちがいたんだ。
「なるほど。これはルディーンがロルフって言う金持ちの爺さんから貰ったお土産なのか」
「うん。僕ね、ロルフさんのお孫さんがお尻の痛くならない馬車を欲しいって言ってるたから、フロートボードの魔石を作ってあげたんだよね。そしたらそのお礼って言って、これをくれたんだ」
「なるほど。魔道具を作った礼というのなら、この量も頷けるな」
そう言いながら荷馬車の中を見渡すお父さん。
でね、そのお父さんの目が、ある場所でピタって止まったんだ。
「あれは、もしかして」
「まだ中を確かめていないけど、多分中身はお酒でしょうね」
「ああ。あの大きさの樽なら、まず間違いないだろうな」
お父さんが見てたのは、さっき僕たちも見てたいっぱいあるちっちゃな樽。
樽はね、お酒だけじゃなくって小麦だとか塩だとかを入れる事もあるんだけど、そういうのはもっとおっきなのを使う事が多いんだって。
でもお酒は重たいでしょ?
だからこの小っちゃい樽を使うのが普通だから、お父さんもお母さんも、樽を見ただけで中身はお酒だろうなぁって思ったみたいなんだ。
でもほんとにお酒かどうかなんて外からじゃ解んないからって、お父さんはそのちっちゃな樽に近づいてったんだよ?
でね、お顔を近づけてクンクンすると、こっちを見てニカッて笑ったんだ。
「うん、間違いない。ルディーン、でかした! これで当分の間、呑む酒には困らないぞ」
匂いを嗅いだだけで、お父さんには中身がお酒がって解ったみたい。
だから大喜びで僕をほめてくれたんだけど、そんなお父さんにお母さんがダメよって。
「ハンス。いくらなんでもこれだけのお酒を一人で飲むのは許さないわよ」
「えっ? いや、でも、これはルディーンが貰って来たものだから……」
「ええ、きっと親御さんへのお土産にってくれたものだと思うわよ。でも、流石にこの量はダメ。ある程度はうちに残すとしても、後はご近所に配ります」
「そんなぁ」
さっきまではあんなに大喜びしてたのに、お母さんに叱られたお父さんはしょんぼり。
でもね、そんなお父さんを見て、お母さんも流石にかわいそうって思ったいたいなんだよ。
「でも、一応すべての樽を開いて試飲をするくらいはいいわよ。どの樽を残すのかくらいは、自分で選びたいでしょうからね」
「いいのか?」
「ルディーンが貰ってきたものですもの。味を見ておかないと、次に会った時にお礼を言う事ができないものね」
お母さんは、だから私も一応全種類飲むわよって。
そしたらね、さっきまであんなにしょんぼりしてたのに、それを聞いたお父さんはニコニコ。
「なら今晩から、少しずつ全種類を?み比べるとするか」
そう言いながらいっぱい積んであるちっちゃな樽を、嬉しそうにお家の中に運んでったんだ。
読んで頂いてありがとうございます。
ルディーン君へのお礼ですが、これはお父さんたちへのお土産でもあるので当然お酒も入っています。
でもその量がちょっと多すぎますよね? 実はこれ、ロルフさんの勘違いから来ているんですよ。
ロルフさん、前に買って帰ったものはすべてルディーン君の家で消費する分だと思ってるんですよね。
ルディーン君の館のワイン倉庫を見ても解る通り、ロルフさんは貴族ですから館で使う物を仕入れる時は一度にかなりの量を買い込みます。
それと比べるとハンスお父さんがグランリルの村に買っていった量なんて微々たるものですから、まさか村全体で分けるなんて想像もしなかったと言う訳です。